横尾劇場

2014年05月08日

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「トーコ、最近道ばたで猫とペンギンが漫才やってるんだけど、あれって退治したほうがいいの?」

「座敷童みたいなものだ。放っておけ」

「そりゃ悪さするようには見えないけどさ。なんか気になるなーって」

「別に何もしやしないさ。人間社会に溶け込んでるはずだ。人間モードのときもあるはずだぞ」

「え? 何、あいつら化けれるの?」

「化けれる。というか私がそういう道具を渡した。何かと不便かと思ってな」

「なんでそんなこと?」

「土地神、というほど高尚なやつらではないが、あれも大切なこの町の住人だ。そう構ってやるな」

「ふーん」

「……」

「ところでさ」

「なんだ?」

「今って、何月何日?」続きを読む

in_450thearth at 18:14|PermalinkComments(0)

【トカバニ出張版02】

「世間的にはGWだったらしい」

「いやあんたもそうだったでしょうが」

「馬鹿野郎。俺様にはゴールデンウィークなんかねえよ。毎日が日曜日だ」

「死にたくならない?」

「ときどき」続きを読む

in_450thearth at 17:46|PermalinkComments(0)

2014年04月18日

トカバニ(出張版)

「この広大にして混沌としたネットの海をさまよったあげくアクセス数が一日10PV回るか回らないかという辺鄙なブログに辿り着いてしまった物好きすぎる皆様こんにちは、我が輩は猫である」

「こんにちはー、ペンギンでーす」

「友人がブログを始めたいというから書き込み権利を渡したら何やら素人には理解しがたいプログラミングの話を延々と始めやがり、しかもそれがマニアックながらも好評という結果が突きつけられてアイサツに困っていたが、いい加減に創設者としては何か記事の一つでも書かねばヤバかろうということで何も考えずに書き出してみた。このような台詞を延々と書き連ねている時点でこのブログの訪問者はすでにブラウザバックをしていることと思う。これからは情報自動拡散器とも呼ぶべきネット海でまったく拡散されることのない会話を垂れ流していこうと思う。さあそろそろ読者数がゼロになったかな?」

「あんたいろいろマゾすぎてドン引きだよ。あたしも帰っていいっすかね」

「俺権限で却下だ。俺とこの鳥頭は今は亡きmixiというSNSで活動をしていたが、なんの縁があってかこちらのほうに流れてきた。既存のファン(0人)は久しぶりだな」

「いろいろ訂正したいがとりあえずmixiは別になくなってないよ。株式会社mixiに謝れ」
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in_450thearth at 12:53|PermalinkComments(0)

2014年04月12日

真宵のベッド

 真宵のベッドは魔法のベッドだ。一晩眠ればたちまち悩みが解決する。癒しのベッドなのだ。そんな噂が囁かれ、彼女の家には連日連夜、友人知人や赤の他人がやって来て、ベッドで一晩過ごしては帰っていく。一宿のお礼に、ベッドを借りた人は朝に弱い真宵を起こして朝食をこしらえてやる。それが、真宵のベッドを借りるルールだ。
 真宵の本名は門音マコトという。門音という漢字を縦書きすると『闇』になり、マコトは『真』。二文字をもじって『真宵』。彼女の友人がそんなニックネームを付けて以来、真宵は真宵と呼ばれるようになった。
 真宵は一人暮らしの、低血圧気味な女子大生だ。女子大生とはいっても華奢な上に背が小さいから、中学生くらいに見える。真っ黒な髪は肩に届かないくらいで切り揃えていて、緩い服装を好む。部屋着はいつもパジャマだ。いつも眠そうに目をとろけさせているが、実は瞳が大きく黒目がちなことを、彼女と話したことのある人はみんな知っている。
 彼女は夜の九時になると早々に床に就き、朝日が昇るまで目を覚まそうとしない。しかし彼女は毎日寝不足に悩まされている。ベッドを借りにきた人の話を聞き、相談相手になっているからだ。毎日のように誰かが泊まっていき、彼女の睡眠時間を小一時間ほど奪っていく。そして真宵も眠い眠いとぼやきつつ、最後まで隣人の話を聞くのだから、なかなかのお人好しである。
 真宵のベッドを借りた人は彼女に感謝と親愛の情を覚えるとともに、それ以来、彼女の生活能力の低さを助けてやるようになる。真宵はいつも寝不足で朝が弱く、料理もへただ。面倒くさがりで掃除も洗濯もしたがらない。まあ掃除については、彼女の部屋は誰もが驚くほど物が少ないから問題ないといえば問題ないが。歌を歌うことが得意な彼女は、ベッドを貸すことで人間関係を築き、人と助け合っている。これはこれで円満な生活だと言えるだろう。だいたい彼女はお客に相談をされても毎日七時間は眠っているし、実を言うと、お客が語るベッドタイムストーリーが嫌いではないのだ。
 眠い眠いとぼやくのは、半分は本音だが残りの半分はお客を早めに寝かせようというささやかな心遣いである。もちろん真宵のベッドを借りる人は、彼女の優しさに気づいている。みんなは彼女に甘えている。真宵のベッドで寝ていると、真宵に甘えたくなるのだ。真宵はそれを許している。というか気にも留めていない。彼女はいつもの通り、素直に人と接するだけだ。
 妹のようで姉のようで、母のようで娘のよう。真宵は不思議な女の子である。
 真宵は今夜も、お客のベッドタイムストーリーに耳を傾ける。
 真宵のベッドは魔法のベッド。彼女のお客にとっては、一晩眠ればたちまち悩みが解決する、癒しのベッド。
 そして真宵にとっては、大好きな友人といっしょに眠れる、大切なベッドだ。

in_450thearth at 23:12|PermalinkComments(0)