2013年04月

2013年04月30日

+6/開催中です

「みんなはGW、どこか行かないの?」

「会社説明会」

「バイト」

「図書館に行きます」

「トーさんと姐さんはぁ?」

「締め切りはまだだし、特にないな」

「アタシもないわねぇ」

「三人でどっか行かない?」

「そうねぇ。トーコさん、何かアイディアはないかしら?」

「知り合いのイラストレーターが、展覧会をやっているらしい」

「何それ初耳なんですけど!? 誰!?」

「それは秘密だ。行ってみるか?」

「行く行く!」

「おもしろそうね。展覧会はどこやってるの? 上野? 六本木?」

「秋葉原だ」

「えー? 秋葉原に美術館なんてあったかなぁ」

「いや、美術館じゃない。開催はUDXだ」

「UDXで展覧会?」

「……もしかして」

「GWは絵師100展を見に行こう」

in_450thearth at 20:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月25日

+5/偉そうな口をきくうちは、子供です

「くっそヒマなんだけど」

「掃除は終わったのか」

「終わったよ。洗濯も晩ごはんの仕込みも、ぜーんぶ終わった。ねえ、なんか仕事ないの?」

「自分で探せ。私は締め切り前で忙しい。コーヒーでも淹れてくれ」

「アイサー」

「砂糖は三つだ」

「わーかってるって。別にここにいなくたって、できたら部屋に持ってくけど?」

「いや、ここでいい」

「自分の部屋があるんだから、わざわざリビングで書くことないでしょうに」

「気分転換だ。それに、こっちの部屋のほうが外光がよく入る」

「あんまり引き蘢ってても体に良くないしね」

「そういうことだ」

「……ねえ、トーコ」

「なんだ」

「なんであたしなんか拾ったのさ」

「私はおまえを拾ってなんかない。おまえが勝手に住み着いたんだろう」

「それでも、あんたはあたしを追い出さなかった。部屋をくれて、仕事もくれた」

「家賃が払えないと言うのだ。せめて家事手伝いでもしてくれなければ割に合わん」

「なんだかな。それって、ツンデレ?」

「恩返しのようなものだ。特別したくてしたわけじゃない」

「恩返し? 誰への?」

「私の恩人だ。私の前、ここの管理人をしていた」

「へーへーへー。昔はどんな人がいたのさ」

「常識人の私が困るほどの変人だ。ま、私と管理人を含めて四人しかいなかったがね」

「あんたが常識人……?」

「文句があるのか」

「なんにも。ほら、コーヒーお待ちどー」

「ああ、すまない」

「もうすぐ四月も終わりだね」

「そうだな」

「あたしはいまだに、何をすればいいのかわかんないままだ」

「誰だってそうだろう。自分が何をするべきかなんて、けっきょく、自分のしたいことを正当化しているに過ぎん」

「大人みたいなこと言っちゃって」

「一応、これでもおまえより年上だ。それよりも、」

「なに?」

「……苦いぞ、これ」

「子供舌め。牛乳入れる?」

「いただこう」

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2013年04月16日

+4/マグノリア

「荷物、ここ置いときマスよ」
「ああ、ありがとうございます」
「いえ。いつもありがとーございます。またよろしくどうぞ」

悪市は肩を軽く回し、店外で待機していたトラックに乗り込む。
ドライバーのシゲさんは吸いかけのタバコを吸い切るまで動くつもりはなさそうだ。
悪市は帽子を脱いで大人しくなった髪をかき上げる。

「シゲさん」
「なんだ」
「この店の人、いっつもあの女の人っすよね」
「そりゃ、店長だからな」
「店長? あんな若いのが?」
「若いって、おめえよりは年上だろうよ」

 先輩は短く笑って、ふと真顔にもどる。

「もしかして、おめえレンさん狙ってんのか?」
「へえ。あの人、レンさんっていうんすか」
「蓮木(はすぎ)だから、レンさん。『蓮』の花にふつうの『木』って書いて、蓮木な」
「ナルホド」
「で、どーよ? 狙ってんのか?」
「なわけないじゃないっすか。シゲさん、なんでもそういうのに結びつけすぎっすよ」
「おめえがあんまりにも乾いてっから、先輩としては心配になるわけよ」
「とってもありがたーい迷惑っす」

そろそろフィルター近くまで燃え尽きそうだ。シートベルトをしめる。

「ホモに目覚めないか俺はヒヤヒヤする」
「ダイジョブっす。俺、親戚曰く『総受け』らしいっすから」
「意味わかんねーけどキモいこと言ったのはわかる」

シゲさんはタバコを灰皿に放り入れると、キーを回した。
ググググと車体が振動する。

「さ、次行くぞ。美女に会うのはまた明日」
「了解っす」

 帽子を被り直し、ツバで目を隠しながら店のほうを窺う。
 レジ前の店長が見えた。銀に近い金髪。褐色の肌。細い銀縁メガネ。間違いなく日本人ではない風貌だ。
 彼女はエメラルドグリーンのエプロンを身につけて、何やら帳簿をつけている様子だった。

「……美女、ねえ」

 たしか顔は整っている女性だが、悪市はシゲさんの言葉に引っかかっていた。なんというか、肉付きが引き締まりすぎているような……
 考えている最中に車が発進し、悪市はそこで思考を止めた。
 本屋の店長、蓮木。店先の看板には、マグノリア書房と書いてあった。

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2013年04月04日

+3/伏兵

「うしゃー通算百連勝ォーッ!!」

「だぁああああああ! くそ、全ッ然勝てねえ! なんなんだよおまえ強すぎだろ!」

「何してるんですか?」

「みっちゃん! 今日はお祝いだぜ! 酒池肉林だよ! ケーキとか食べたい気分!」

「いいですね。けど、今日はもう遅いのでケーキは明日にしましょう」

「いらねーよケーキなんて! たかがぷよぷよで勝ったくらいでイイ気になんなよ!?」

「うははー。何やら負け犬の遠吠えが聞こえるにゃー?」

「こいつ腹立つー!」

「えっと、つまり恋子ちゃんがぷよぷよでアイさんに百連勝したんですか?」

「イグザクトリィ! ついに百連勝なんだよ。百戦百勝っ。すごくない?」

「それはそれは」

「誇らしげにすんな。おいみつ。おまえちょっとやってみなよ」

「え、私がですか?」

「アイちゃん大人げなーい。自分が勝てないからみっちゃんにも負けを味あわせようなんてー」

「あんたが強すぎるのかあたしが弱すぎるのかハッキリするだろ。みつ、いいだろ?」

「私は構いませんけど……歌丸さんはいいんですか?」

「全然おっけー! 返り討ちにしちゃうよん!」

「そうですか。では……」

「お、アルルちゃんか。シブいねー。それじゃうちはアミティちゃんにして……うちは辛口にするけど、みっちゃんは甘口にしとく?」

「いえ、私も辛口で構いません」

「……えっと、ルールわかってるよね?」

「ぷよぷよフィーバーなら。前の学校の友達と、何回か勝負したことがあります」

「そうか。ならおっけ。こっちも手加減しないよ」

「はい」

「ゲームスタート!」

「みつ、辛口でだいじょうぶなのか?」

「盛り上がってるな」

「みつと歌丸が初めてぷよぷよで勝負してんの」

「へえ。みつは経験あるのか」

「やったことはあるってさ。でもま、歌の強さは頭おかしいレベルだから」

「……勝敗がわかってるゲームなんて、見てもあまりおもしろくないな」

「おいおい、そう言ってやるなよ。みつだってもしかしたら、」

<ばたんきゅー。

「お、終わったのか。どっち勝ったんだよ、歌」

「ふぅ……」

「……」

「歌、どうした?」

「……負けちゃった」

「は?」

「いや、だいじょうぶい! まだ一敗! 次で二回勝てばいいだけだもん!」

「そりゃたしかにぷよぷよは2ゲーム1セットだけど、は? 何? みつってそんな強いの?」

「アイちゃん、画面見てなかったの? じゃ、今度はよく見てて。みっちゃんはアルルのほうね」

「んん? いいけど」

「お待たせ。それじゃ再開するよ」

「いつでもどうぞ」

「次は勝つ! スタート!」

「うわぁ、いきなりガンガン積まれるな。ていうかおまえら動体視力どうなってんだよ。なんで下キー離さずに操作できるんだよ」

「――ッ!」

「――――、」

「おー。さすが歌、連鎖組むのめっちゃ早いな。みつはまだ積んでる途中だぞ」

「でもこれフィーバーだし。相殺カウント貯められてフィーバーモード入られたら、」

「いやいや。あたしらも何回かフィーバーでやったけど歌のじゃまぷよが多すぎて、一回のフィーバーじゃ相殺しきれなかったじゃん」

「アイちゃんとみっちゃんはレベルが違うの!」

「はいはい。そーですか」

「うたちゃん、戦闘中におしゃべりとは余裕ですね」

「え、ちょ! もう返したの!?」

「フィーバーモードは自力で積んでなんぼですよ。速攻です」

「えげつない感じに星ぷよが、」

「えい、これで十五連鎖全消し」

「うんぎゃぁあああああああ!!」

「あーあー、こりゃ酷い」

「みつは算数が得意だからな」

「これがそういう次元かよ。百点しか取ったことないって?」

「いや、さすがにそんなことはありえないが、少なくとも九十五点以下を取ったことがないらしい」

「……予想以上にもほどがあるね」

「パズルゲームなんて、要するに単純な計算の積み重ねだ。算数勝負で、みつに勝つのは無理だろう」

in_450thearth at 21:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月03日

+2/言っていいネタ、ヤバいネタ

「『いたずら』って言葉はちょっとエッチだと思う。どんどん使っていきたい、そんな2013年度」

「おまえは四月馬鹿ってより年中馬鹿だよな。まあそんなことより、エイプリルフールってあたしなーんもしてないな。ごはん作って掃除して洗濯して、平常運転」

「うちはパソコンの前から離れられなかった」

「は? なんで?」

「ほら、エイプリルフールってことで気相入れたドッキリネタをサイトに仕込む企業やブロガーさんがたくさんいるからさ」

「それを一日見てたわけか。ヒマだねぇー。そんなことしてる時間あったら、あたしはエントリーシート書くわ」

「何さー。けっこう有意義だよー? 特にエロゲーメーカーのネタのギリギリ感が最高」

「一日中そんなもんを見てたのかよ」

「主に型月のSAOネタが良かったね。BUNBUNさんのイラストに対して『なんとかオンラインのアスナさん』って言っちゃうあたりが」

「そういうオタク系の話はあたしじゃなくて悪市あたりにしてくれ」

in_450thearth at 11:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月02日

+1/体育会系のノリ

「四月に入ったわけだし、ついに新年度開始! ニートのあたしにゃ関係ないけどな! 誰かお仕事クダサイ!」

「俺にも関係ねえな。新人が入るらしいが、別に俺が教育するわけでもなし」

「あんたに教育なんて上等なものができんの?」

「ああ? 舐めんな。よゆーでできるっつの。スパルタでいいならな」

「スパルタねぇ」

「主に叩いて伸ばす方式で。失敗したら愛の鞭(ビンタ)。成功しても愛の鞭」

「パワハラで訴えられるぞ」

「出る杭は打たれるものさ。餅はつかれた分だけうまくなるんだよ。どんなものでもいっしょだろ」

「軍人まがいだなー。つっても、最近は軍隊も体育会系は卒業して、だいぶシステマティックな体制に変わったみたいだけど」

「ま、冗談はさておき俺んとこもそーゆーノリは全然だな。先輩が先輩だからしょうがねえけど」

「一気飲みとかは?」

「そもそも先輩が飲めねえし」

「それじゃあるわけないか」

「だいたい、今時体育会系なんて体育系のところでも少ねえぞ。むしろそうじゃない分野のほうが未だに体育会系のノリが残ってるくらいだ」

「あるねー。あたしも高校の演劇部はそんな感じだった」

「嫁と姑とかな」

「あれを体育会系と呼んでいいのかね」

「なんにしても俺には縁遠い話だ。ここ数年、そういうノリの場面に出くわすことも、」

「なんだい、このみそ汁はッ! アタシを成人病にする気かい!?」

「ああっ、お姉様!」

「……」

「……気の毒そうに聞くけど何してんの?」

「嫁姑ごっこ! アイちゃんもやる!?」

「やらねーよ」

「この子が女子力を上げたいっていうから、手伝ってるのよ」

「みそ汁うんぬんで女子力が上がるかぁ?」

「他にも窓枠をツーッとやってほこりをフッと飛ばしたり、トイレのスリッパを捨てたりするよ!」

「なんだかなぁ」

in_450thearth at 19:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月01日

±0/登場人物

 トーコ ……下宿屋の主人。見た目は老人。1号室。

 アイ  ……家出少女。高卒ニートで就活中。2号室。

 みつ  ……物静かな小学五年生。3号室。

 悪市  ……肉体労働派な二十歳。4号室。

 歌丸  ……テンションが高めな女子高生。5号室。

 うい  ……おネエ系な大学生。6号室。
  ハジメ ……地味で穏やかな大学生。6号室。

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